長い歴史を持つプラセンタ療法
プラセンタとは、英語で胎盤のことです。
胎盤は、皆さんもよくご存じのように、母親の胎内で胎児と母体をつなぎ、胎児を育てる臓器です。
臓器といっても、もともと女性の体に備わっているものではありません。
受精卵が子宮内壁に着床して初めてつくられるもので、役目を終えると対外に排出されます。
必要なときだけに設置される、仮設の臓器といえるでしょう。
さて、受精卵はわずか10か月という短い聞に、重さが3kgもある赤ちゃんに成長します。
この脅威的な生命力をはぐくむのが、胎盤です。
胎児は胎盤を介して母親の血液から栄養をもらい、育ち、人間として大きく生長します。
それだけではありません。
人聞として成長するのに必要な機能はすべて、胎盤が担っているのです。
たとえば肺呼吸できない胎児にかわり、酸素を送り、二酸化炭素を受け取ります。
またブドウ糖やたんぱく質の合成を促して体内で使いやすい形に変えたり、
不要になった老廃物を排世したり、感染などから守る免疫機能も果たしています。 私たちの体には、呼吸(肺)や代謝(肝臓)、排世(腎臓)、免疫(血液)などを行う臓器が
それぞれありますが、そのすべての機能を胎盤ひとつでまかなっているのです。
この胎盤には豊富な栄養成分と、さまざまな有効成分、活性成分が含まれています。
それをよく知っているのが、動物でしょう。
犬や猫を飼っている人なら見たことがあるでしょうが、
子どもを産んだあとの母犬や母猫は、胎盤を食ぺてしまいます。
犬や猫だけでなく、動物はみんな産後、胎盤を食ぺます。
それによって出産後の衰えた体力を回復させるのだといわれています。
胎盤がそれだけ栄養豊富で体によいことを、動物は本能として知っているのです。
人間も、一部の国や地方では、昔は胎盤を食ぺる風習があったそうです。
いまほど食べ物が豊かではなかった時代、妊婦にとって胎盤はこのうえない養生食だったのでしょう。
プラセンタ療法とは、胎盤から抽出したエキスを治療や美容に使うもので、
内服薬や注射、化粧品などがあります。
最近にわかに注目されるようになったプラセンタ療法ですが、決して新しい治療法ではありません。
その歴史は、紀元前・古代ギリシャ時代にさかのぼります。
プラセンタの薬効はその頃から知られており、「医学の父」と呼ばれる
ヒポクラテスも治療に使っていたという記録が残されています。
漢方薬の長い歴史を持つ中国ても、胎盤の薬効は古くから注目されていました。
紀元前3世紀には、傷の治療薬として使われていたようです。
また、あの、死ねまで不老長寿を求めたという秦の始皇帝は、
胎盤を不老長寿の薬のひとつとして使ったそうです。
胎盤が漢方薬として初めて書物に登場するのは、紀元後10世紀の頃です。
唐の時代に編纂された『本草拾遺』に、「人胞」「胞衣」という名前で薬として紹介されています。
こののち、中国の代表的な薬物書『本草項目』(1596年)には、「紫河車」という名前で
胎盤の薬効が記されています。
それによると、紫河車は「気血を養い、精を補い、解毒作用があり、心を安んずる」
生薬だということですから、胎盤に滋養強壮や精神安定効果があることがうかがえます。
紫河車はその後、さまざまな漢方薬に配合され、現在も使われています。
また韓国や日本にも伝わり、日本では加賀の国(石川県)の秘薬として知られる「混元丹」に、
紫河車が使われています。
この混元丹は、虚弱体質を改善し、慢性の結核によく効いたそうです。
薬としての効用だけでなく、美容や若返り効果も昔から知られていました。
真偽はともかく、エジプトの女王クレオパトラがプラセンタで美貌と若返りを保っていたとか、
フランスの悲劇の王妃マリー・アントワネットが若返りの妙薬として使っていたという話が残っています。
いずれにしても洋の東西を問わず、また時代や国境を越えて、
胎盤が人々の健康や美容のために使われてきたのは間違いないようです。
しかし胎盤が中国で漢方薬として根づいたこととは裏腹に、
西洋ではその後科学的な西洋医学が発達し、ほとんど顧みられなくなってしまいました。
そのプラセンタを現代によみがえらせたのは、旧ソ連の眼科医師、フィラートフ博士です。
ソ連では当時、疾患を持った皮膚の中に、冷蔵保存した健康な組織を埋め込む
「組織療法」の研究が進められていました。
この埋め込む組織のひとつに胎盤が使われたのです。
この組織療法は、フィラートフ博士の提唱する次のような理論に裏づけられていました。
「動植物の組織は、冷却することによって組織再生能力を持った因子が誘発される」つまり、
冷却という過酷な環境下に置かれることによって、
細胞を賦活したり生体を刺激する因子が生まれるというのです。
組織療法の中でも有用性が高かったのが、胎盤でした。
胎盤は体のさまざまな機能を活発にするだけでなく、
病態部分の治癒を促進する作用もあることがわかってきたのです。
この組織療法を日本の医療に導入し、独自に発展させたのが
久留米大学の薬理学教授、稗田憲太郎博士でした。
稗田博士は組織療法についてさらに研究を深め、圏内の医療機関に組織療法を広めました。
その一方で、冷蔵した胎盤からエキスを抽出して治療に使う「冷蔵胎盤?液療法」を確立しました。
これを応用したのが、現在も使われている肝硬変の注射薬です。
これは「ラエンネック」という医薬品として、1959年に厚生省から認可されました。
のちに、同じようにつくられた「メルスモン」が、更年期障害の薬として認可されています。
この2つは、どちらも同じ原料を使い、製法もほとんど同じです。
にもかかわらず、違う薬として認められているということは、
プラセンタにそれだけ幅広い効能があるということです。
その効能の多彩さは、あとの項を読んでいただけば納得されるでしょう。
ちなみに、現在プラセンタが保険適応になっている症状は、
肝硬変や肝機能障害、更年期障害、産後の乳汁分泌不全です。
これ以外に使うと保険外治療(自費治療)になります。
組織療法のほうは、一時国立病院などでも積極的に行われていましたが、
さまざまな問題からしだいに下火になってしまいました。
問題というのは、感染症の発生や胎盤の確保などです。
しかし、組織療法もそういう問題がクリアされれば効果の高い治療法なので、
現在も多くの医師がプラセンタの効果に注目し、治療に取り入れています。
現在では、組織をそのまま埋め込む方法以外に、すりつぶしたものを注射で
投与する方法などが組織療法として行われているようです。
プラセンタを美容や不老長寿の薬として愛用していたのは、
秦の始皇帝やクレオパトラばかりではありません。
スイスのレマン湖のほとりにあるクリニック『ラ・プレリー』には、
現在も世界中のお金持ちがプラセンタ療法を受けにやってくるのだそうです。
ここで行っているのは、おもに注射によるプラセンタの投与ですが、
目的はやはり美容と老化防止。
あのオードリー・へプバーンやチャップリン、ダイアナ妃、マドンナなども受けていたそうです。
チャップリンが60歳を過ぎて子どもをつくったのは、
プラセンタ療法をしていたからだという噂もあります。
避暑を兼ねてのバカンスで、美しく若返る。
うらやましい話ですが、現代によみがえったプラセンタ療法は、
新しい不老長寿・若返り療法として、かなり高い知名度があるようです。
レマン湖でのプラセンタ療法はそう簡単には受けられませんが、
日本にいてもプラセンタの恩恵にあずかることはできます。
最近のプラセンタブームで、化粧品や栄養補助食品・健康食品にも
盛んにプラセンタが使われるようになりました。
それらは医師の処方箋がなくても使えるので、健康維持や美容に手軽に利用されています。
ちなみに化粧品や健康食品には、ヒト由来のものではなく、
豚や牛の胎盤から抽出したエキスが使われているようです。
プラセンタの広範な効用の秘密
プラセンタの成分を分析すると、多彩な有効成分が含まれています。
次ぺージの表にあるように、アミノ酸やビタミン、ミネラル、
糖質などの各種栄養成分のほか、酵素や核酸、多種類の成長因子や
サイトカインなど、数多くの活性成分が見つかっています。
この中、でもとくに注目されているのは、数多く存在する成長因子(Grows Factor)の作用です。
胎盤は、胎児を成長させたり臓器をつくるために、たくさんの成長因子を持っています。
それが、衰えた細胞や組織を活性化させるのではないかと考えられています。
たとえば、肝硬変は肝臓が硬くなって繊維化し、再生しなくなってしまう病気です。
それがプラセンタの投与によって改善するのは、プラセンタに肝細胞増殖因子があり、
肝臓が再生するからです。
またお肌が若々しくなるのも、コラーゲンやヒアルロン酸を産生する繊維芽細胞増殖因子や、
皮膚を増殖させる上皮細胞増殖因子があるからです。
ほかにも多種類の成長因子が含まれていますが、
これらの成長因子が体中のさまざまなところに作用して、
いろいろな症状を改善しているのではないかといわれています。
もちろんプラセンタの作用を語るとき、ほかの有効成分も無視できません。
しかし成長因子が含まれていることによって、
プラセンタ特有の作用が生まれるのは間違いないようです。
そこで、プラセンタにどんな作用があるのか、
これまでに確認されているものを表にまとめてみました。
下記の表にあるような多彩な作用が複合し、相乗して、
以下にあげるプラセンタの効用に結びついているものと考えられます。
効用については、私のクリニックで改善例が多い症状を中心にお話していきましょう。
[更年期障害の改善効果]7割近い著効とともに生理が再開する人もいた
更年期の治療に対するファーストチョイスは、HRTです。
ただ、ホルモンの投与に抵抗のある患者さんや
HRTができない患者さんもいらっしゃるので、
そういう方に私はプラセンタ療法を行っています。
更年期の症状を取るという点では、プラセンタ療法にもとても効果があります。
ほてり、のぼせ、冷え、肩こり、全身倦怠感、疲労、イライラ、
不眠など、更年期症状全般によく効きます。
とくに肩こりや疲労の改善にはめざましい効果があり、
ひどい肩こりや疲れが取れて楽になったとおっしゃる患者さんはかなりの数にのぼります。
これまでの臨床試験ては、更年期障害を訴える女性に投与したところ、
7割を超える高い改善率を認めています。
私のクリニックでも更年期障害の女性132例にプラセンタ療法を行ったところ、
著効88例、有効37例、無効7例と、高い改善率がありました。
また、更年期症状だけでなく、コレステロールを下げる働きもあります。
当院では打例中日例が著効、有効8例、無効10例でした。
プラセンタはホルモンではありませんが、ホルモン活性を高める作用があります。
したがって閉経後数年たった女性でも、治療のためにプラセンタを投与すると、
一時的に生理が再開することもまれではありません。
女性ホルモン値(E?)も上昇します。
当院でプラセンタ療法を受けられた更年期障害の患者さんの
女性ホルモン値(E?)を測定したところ、
治療開始1か月後の女性ホルモン値が上昇したのは、74例中74例でした。
プラセンタにはホルモン物質は含まれていませんが、
このように多くの患者さんの女性ホルモンが上昇するのです。
とくに閉経後の年数が短い方ほど、この効果は著明に現れる傾向があります。
更年期障害の場合、卵巣の機能はすでに低下に向かっていたり、停止しています。
プラセンタ療法は、卵巣に働きかけて機能を回復させる作用があるようです。
また、全身の機能が回復したり活性化することによって、
症状の改善が促されるものと思われます。
さらに自律神経を整える作用がありますから、
更年期の自律神経失調症を改善していくのではないでしょうか。
[生理不順・月経困難症の改善効果]ホルモン異常在整える
プラセンタは、若い女性の生理不順や月経困難症の改善にも効果があります。
これはプラセンタに、各種ホルモンの活性を高めたり、
分泌を調整する作用があるからです。
月経困難症に対しては、当院では21例中7例に著効、9例が有効、
あまり変化がわからないという人が5例でした。
効果の現れ方には個人差がありますが、
早い人では5~6回の注射で効果が出ています。
プラセンタが抜群の効果を発揮するのが、疲労の回復です。
疲労感は本当によく取れて、たった1回の注射で
「すごく楽になりました」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
仕事がきつくて疲れてしかたないとおっしゃる若い女性には、
1回注射するだけでもとても効果があります。
またその日の眠りが深くなるのか、「朝起きたときの目覚めが違う」
「疲労感が残っていない」という声もよく聞きます。
すぐに効果を得られなくても、2~3回目からそういう効果を実感できるようてす。
プラセンタはお年寄りの疲れにもとてもよく効きます。
ちょっと外出しただけでも疲れるとおっしゃっていた70~94歳までの15人に プラセンタを投与したところ、とてもお元気になられて、
皆さん積極的に外出されるようになりました。
また不眠にも効果があります。
私のクリニックに通院されていた不眠の患者さん
82例中70例で改善が見られました。
そのうち睡眠薬をやめたり減らしたりできた人は32例です。
効果は、疲れや不眠のひどい人ほどはっきり感じるようです。
[肝機能障害の改善効果]C型肝炎のウィルスが激減した
プラセンタは、もともと稗田先生が肝硬変の薬として考えられたものです。
しかし肝硬変だけでなく、肝機能障害全般によく効きます。
これは先ほども書いたように、プラセンタに肝細胞を再生させる作用があるからです。
最近注目されているのは、C型肝炎への効果です。
C型肝炎は、ウィルスによって感染する病気です。
感染経路は輸血や性行為が多いのですが、
はっきりわからないケースも少なくありません。
また、慢性化すると肝硬変から肝ガンに進む確率が高く、
慢性患者の5割が肝硬変に進むといわれています。
治療には、いまのところインターフェロンしかないのが現状です。
インターフェロンはマクロファージやリンパ球から
分泌されるサイトカイン(免疫物質のひとつ)で、
抗ウィルス作用のあるたんぱく質です。
これを投与してC型肝炎ウィルスをやっつけるわけですが、
人工のインターフェロンは副作用が強く、
患者さんは吐き気や発熱、食欲不振なEに苦しめられます。
また一時的によくなっても、再発する人がかなりいます。
このC型肝炎の串盆台さんにプラセンタを投与すると、
ウィルスが激減するという報告があります。
これはプラセンタが肝細胞を増殖させ、肝機能が改善するとともに、
内因性のインターフェロン産生を増長させ、
さらに免疫を賦活させる作用があるためだと考えられています。
プラセンタそ毎日点滴することで、肝機能が改善するだけでなく、
C型肝炎ウィルスが消失した症例も報告されています。
当院では、慢性肝炎8例中、6例が血液検査で肝機能が改善しました。
肝ガンの患者さんは2例ありましたが、1例は腹水が軽減し、
もう1例は食欲増進、腰痛消失などの効果を見ています。
肝臓は再生力の旺盛な臓器ですが、一度肝硬変になると再生されなくなります。
ですから、肝炎の段階で確実に治しておかなければなりません。
プラセンタ療法を行うと、先はども書いたように疲労回復効果が非常に早く現れますが、
これはひとつは肝機能が回復するからです。
また肝機能がよくなれば、女性に大敵のシミも自然に薄くなっていきます。
プラセンタは注射や内服薬のほかに、化粧品にも使われています。
プラセンタの美肌効果は以前から認められており、
化粧品の中に成分のひとつとして配合されているものもありますから、
知らず知らずのうちに使っておられる方も多いのではないでしょうか。
しかし、プラセンタをより効果的に使用するために、
私が患者さんにおすすめしているのは、プラセンタ原液の美容液やパックです。
これらを注射や薬と併用すると、お肌の調子が全然違ってきます。
ハリが出てシミが薄くなり、美肌がよみがえってくるのです。
プラセンタは分子が小さいので、皮膚からもよく吸収されます。
シワやたるみは、真皮の繊維組織が衰えることから起こります。
肌の弾力やハリをつくるコラーゲンやエラスチン、
保湿成分のヒアルロン酸は、識維芽細胞によってつくられます。
したがって繊維芽細胞が衰えるとこれらが減少し、シワやたるみの原因になります。
プラセンタには、この繊維芽細胞を活性化し、増殖する作用があるのです。
またシミやくすみは、皮膚の新陳代謝が悪くなり、
古くなった角質がはがれ落ちなくなって起こるものです。
ところがプラセンタには上皮細胞増殖因子があり、皮膚の細胞のDNA合成を促進します。
そのため、皮膚細胞の再生が早くなり、古くなった角質をはがし、
たまったメラニン色素を外に追い出してくれるのです。
つまりプラセンタは、皮膚の基本的な作用を正常化し、
根本的に肌を健康にしてくれるものなのです。
こういう作用に加えて、活性酸素を抑える抗酸化作用も、
美肌や美白にひと役買っています。
シミやニキピ、そばかす、日焼けなどは紫外線の影響で
産生される活性酸素のなせるわざですが、
これを除去することによってそれらを予防したり改善できるのです。
おもしろいことに、患者さんを見ていると、
シミは顔よりも手から早く取れていくようです。
患者さんの1人に、手の甲に生まれつき大きなアザのある女性がいらっしゃいましたが、
そのアザが、プラセンタを1か月ほど使った頃から薄くなっていったのです。
諦めていただけに、この患者さんの喜びはとても大きいものでした。
私のクリニックには、この患者さんをはじめ大勢の患者さんが、
美肌を目的にプラセンタ療法を受けるために通院されています。
その治療効果は、上記の表のとおりです。
[老他防止・若返り効果]成長因子によって細胞が活性化する
古代から人間の究極の願望は、いつまでも年をとらず、
若く美しくありたいということだったのではないでしょうか。
秦の始皇帝が不老長寿の薬を探し求めたのも、
そういう見果てぬ夢を追っていたからでしょう。
しかし、老いはだれにでも平等に訪れます。
ただ、その訪れを少しだけ遅くすることはできるのではないでしょうか。
そのいちばん近いところにあるのが、プラセンタだと私は思っています。
古くはクレオパトラやマリー・アントワネットが使い、
新しいところではオードリー・へプパーンや
あのマドンナまでが使っているといわれているプラセンタ。
まさに現代の若返りの秘薬といっていいかもしれません。
プラセンタは、胎児の臓器をつくったり、成長・発育を促す臓器です。
その中に多種類の成長因子が含まれていることはすでに書きました。
それらの因子が細胞を活性化したり、
衰えた全身の機能を正常に戻す可能性は十分あります。
疲れが取れたり肌が若返るのは、そういう作用のひとつの現れではないでしょうか。
ですから長期につづけることによって、老化の進行を食い止めたり、
ボケを予防する効果も期待できると思います。
先ほどのプラセンタの作用のところで紹介したように、
プラセンタには非常に多様な作用があります。
したがって効果を現す症状も多岐にわたっています。
まずアレルギー性の疾患です。
アトピー性皮膚炎や気管支喘息によい結果を出しており、
気管支端息では197例中75例(38.1%)に著効があったという報告があります。
当院でも21例中11例に有効でした。
老人性の喘息は根治が非常にむずかしいといわれていますが、
そういう中でこの治癒率は高いと思います。
また自己免疫疾患、である慢性関節リウマチにも、効果が認められています。
そのほか、胃潰蕩や十二指腸漬蕩にも効果があります。
一時PLPというプラセンタの薬が胃潰蕩の薬として認可されていました。
現在は残念ながら製造されていませんが、
胃腸症状によいという臨床報告は多く目にします。
ほかにも強壮・強精効果、脳卒中の後遺症の
改善、神経痛や神経マヒの軽快などが報告されています。
このようにプラセンタの効用はとても広いのですが、
肝障害や更年期障害、乳汁分泌不全以外は保険が適応されません。
そのため、それ以外の疾患に対しては全額患者さんの自己負担になりますが、
プラセンタはそれほど高い薬ではなく、
だいたい2000~5000円の負担で治療を受けることができます。
プラセンタ療法の 実際の進め方
私がプラセンタ療法を治療に導入するようになったのは、更年期の症状で来院されて、
「プラセンタを使ってください」といわれた、ある患者さんのひと言がきっかりでした。
プラセンタが更年期障害の治療薬になっていることは知っていましたが、
それまで使ったことがありませんでした。
しかし、いろいろな文献を読むと、その効果に納得でき、
実際にその患者さんに使ってみたところ、予想以上に効果があったのです。
じつはその頃、私はHRTが使えない患者さんにどうしたらいいだろうかと考えあぐねていました。
更年期にともなう症状には、HRTがいちばん効果的です。
それは間違いがありません。
ところが、HRTが使えなかったり、使うのを躊躇してしまうケースが少なくないのです。
いま、子宮筋腫や子宮内膜症が女性の問でとても増えています。
たとえば、筋腫が大きいと大事をとってHRTを行わないこともあります。
そういう場合は漢方薬やほかの治療を行いますが、それだけではなかなか改善しないことがあり、
もっとよい治療法はないかと探していたところだったのです。
ところがそういうケースにプラセンタを使うと、即効的に、とてもよい結果が出るのです。
しかも美容にもよいこともわかりました。
これは、HRTにも劣らない治療です。
そこでHRTを行えない患者さんを中心に、プラセンタを使うようになったのです。
プラセンタ療法のよいところは、HRTや漢方薬と一緒に使ってもまったく問題がないことで、
問題どころか、効果がさらに高まるのです。
それぞれ効く作用機序が異なるため、作用を補完し合うことはあっても、打ち消すことはないからです。
私はプラセンタ療法に、患者さんの希望に応じて注射と内服薬、化粧品を使っています。
更年期の症状を取るには、2日に1回来院していただき、注射を打つのがいちばん効果があります。
しかし、そんなに来院していただくのは時間的に厳しい場合、
注射は週に1~2回にして、かわり内服薬を飲んでいただきます。
注射は患者さんの症状に合わせて、1アンプル打つ人もいれば、
3アンプル、4アンプルの人もいて、さまざまです。
また健康食品として売られている市販のプラセンタ食品は動物の胎盤を使ったものですが、
私が患者さんにおすすめしている内服薬はヒトの胎盤を使った医療用のプラセンタで、
注射の成分とまったく同じものです。
しかし成分や量が同じでも、注射と内服薬では効果に若干の違いがあります。
注射は直接血液の中に入るのですぐに効き目が現れ、効果も高いのですが、
内服薬は消化器での吸収が悪く効き目が現れるまでに時間がかかり、効果も少し薄くなります。
しかし注射と内服薬である程度血中濃度を維持すると、効果が持続し、症状が改善してきます。
化粧品としては、プラセンタ原液を使った美容液やパックをおすすめしています。
美容液は洗顔後、手持ちの化粧水をつけたあとに、シミや小ジワの気になる部分にたっぷりつけます。
化粧水やほかの美容液に数滴混ぜて使ってもいいでしょう。
美容液は皮膚への吸収がとてもよいので、つけたあとお肌が少し突っ張る感じがします。
パックも非常に効果があります。
目と口のまわりがあいたシート状になっており、プラセンタ原液や臍帯エキスが含まれています。
これを皮膚に密着させ、15分くらいおきます。
取ったあとはお肌がしっとりとやわらかくなっており、その場で効果を実感できます。
私も最近目の下に小ジワが目立つようになったのでこのパックを始めましたが、
シワがほとんど気にならなくなりました。
1枚で3回くらいできますので、つづけてすると効果的です。
お肌だけのトラブルなら化粧品だけでも効果がありますが、
更年期障害にともなうトラブルやお肌の衰えには、
注射や内服薬と併用するとずっと効果が高くなります。
化粧品は毎日のお手入れとして使っていただくほか、
クリニックではピーリング後の吸収のよくなったお肌に使用して効果をあげています。
プラセンタ療法のよいところは、効果が早く、しかもその効果がはっきりとわかることです。
何度も書いているように、症状によっては1回の注射でよくなることもあります。
1回で改善しなくても、たいていの場合は2~3回で効果を実感していただけるでしょう。
1度受けるとリピートする人が多いのも、効果の確かさを裏づけているのではないでしょうか。
プラセンタ療法のもうひとつのメリットは、副作用がほとんどないことです。
プラセンタ製剤に使われているのは、ヒト由来のもので、もともと女性の体内にあるものです。
そこから抽出したエキスですから、女性の体にとてもよくなじみ、やさしく効くのです。
もしこれが人工的につくられたものなら、必ず副作用が起きているでしょう。
しかしなかには、「胎盤なんて気持ちが悪い」とか、
「感染症が心配」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
胎盤といっても、胎盤そのものをそのまま使うわけではありませんし、
あくまでそこから抽出したエキスです。
しかも120℃以上の高温で十分な時聞をかけて熱処理してありまずから、感染症の心配もありません。
いままで私が処方した患者さんの中で、この療法に対する十分な理解をしていただけず、
途中で中止した1例を除いて、体調が悪くなったり副作用を訴えてきた人は1人もいらっしゃいませんでした。
また、これまでの報告でも、副作用はほとんど認められていません。
どんな治療でも、副作用がなく安全なことが最優先されます。
プラセンタは、だれにでも安心して使える治療法です。